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SYN ★~sinと愉快な仲間たち~★
腐女子・BLという単語が判らない・嫌いな方は逃げて!妄想過多により健康を害する恐れがあります。
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幼い頃に両親を亡くして、僕は親戚に預けられた。
僕はそこで育てられて、でも、育ち盛りの僕がいるのは、あまり歓迎されてないみたいで…。
そしてその親戚がまた、僕を別のところに預けた。十三の誕生日を迎えるちょっと前。

預けられたわけじゃなくて、売られたんだと知ったのは、僕が綺麗な着物を着せられて、そして「主人」の前に出たときだった。

「お前の仕事は体を売ることだ。慣れるまでは私の選んだ男を相手にしろ」
「え……僕……」
「お前に選択権はない。……だが、そう簡単に客の前に出すわけではない。ある程度仕込んである商品を求めて客はここを訪れる。風丸」
「およびですか、旦那様」
「新入りだ。案内してやれ」
「この子が……はい、分かりました」

長い髪をきれいに結い上げた男の子に手をひかれて、僕は「旦那様」の部屋を出た。
「……君も売られたのか?」
「そう、みたい」
「みたいって……」
「よく分からないうちにここに来てたんだ」
「……そうか。俺は風丸。君は?」
「僕は吹雪」
「ふぶき、か。いい名前だな」
「あは、ありがとう」

僕がそこで生活するようになって初めてできた友達は、風丸くんだった。
風丸くんは僕よりも前からここにいて、毎晩お客さんの相手をしてるって言ってた。
僕もそういうこと、するようになるんだな。
体を売ることってどういうことなんだろう。僕はまだ、それが何なのか的確には把握できていなかった。

「あの門から外に出ちゃだめなんだ、俺たちはここの中でしか生きられない」
「そう……なんだ」
「死ぬか、身請けされるか、年季が明けるか。俺たちには三つだけの道が用意されてるんだ」
「風丸くんは?」
「俺は年季明けを待ってる。どうしても会いたい奴がいるんだ……ずっと前に将来の約束をした奴が」

そのひとのことを話すとき、必ず風丸くんは優しい顔をした。
きっと大好きなんだ。
僕にはそんな人はいないし、そんな人はできない。
大事なひとなんていらない。失ったときに悲しくなるだけなんだから。

「よう、風丸」
「染岡?」
「……なんだ、新入りかそいつ?」
「ああ。紹介するよ、吹雪だ」
「……よろしくね」
「ふーん。俺は染岡だ」

ぶっきらぼうに自己紹介をして、染岡と名乗った彼は頬をかいた。
わあ、いかめしいな。

「……あの」
「どうしたんだ、吹雪?」
「そめ、おかくんも……?」
僕が訊ねると、風丸くんが噴き出してしまった。染岡くんも苦笑いだ。
僕、なんか変なこと言ったのかな。
「あのなあ」
「う、うん」
「俺みたいな顔のを抱きたいって思うやつがいると思うか?」
「染岡は門番見習いだよ。俺たちが逃げないように、見張りをする役目」
あ、そうなんだ。僕とは仕事が違うんだな。
「おい、風丸。こいつ本当に大丈夫か?」
「大丈夫だと思うよ。俺だってやれてるんだし」
「そうじゃなくてよ」
染岡くんは僕をじっと見て、そして困ったような顔をした。
「知らなすぎじゃねえのか…」
「だから俺がお世話係になったんだよ。染岡も色々教えてやってくれないか」
「俺はいいけど……こいつが嫌がったりしないか?」
風丸くんも僕の方を見た。
「吹雪、染岡のこと、どう思う?」
「えっ?」
「怖いか、怖くないか」
「怖くないよ。染岡くん、優しそうだもの」
僕が思ったままを口にすると、染岡くんは僕のことを、へんなやつ、と言った。
そっぽを向かれて、なにか気に障ることを言ったのかなと不安になる。
そうすれば、風丸くんがこっそり、「染岡は照れてるだけだから」って教えてくれた。


それから僕はお店のことを一から教えられて、まずは体を慣らすことから、って言われながら旦那様に色々教わった。
日々を過ごすことは全然苦じゃないけど、やっぱり体を使うことには全然慣れない。
風丸くんや、佐久間くん(彼は売れっ子すぎて忙しいのに、僕のことを気にかけてくれる優しい人だ)みたいになるにはまだまだ時間がかかりそう。
いつもそれを思うと落ち込んじゃって、そんなとき、僕の足は自然とある場所に向いた。

「吹雪」
「染岡くん」

門の近くの桜の木。
僕のお気に入りになった場所は、染岡くんのお気に入りの場所だったみたい。
毎日のように足を運ぶうちに、自然と彼と会話するようになっていた。
「よう。調子はどうだ?」
「うん、まだまだかなあ」
「いーんだよ、ゆっくりで」
染岡くんの言葉に嬉しくなりながら、彼が庭仕事を始めるのを眺めた。
門番見習いとは言っても、雑用係みたいなことをするんだといつも染岡くんは言う。
でも仕事をしてる染岡くんはすごく生き生きしていて、かっこいい。
そんな彼を見ていると、心の深いところがあったかくなる。
「……お前、そろそろ水揚げか?」
「水揚げ?」
「あー……客、取るようになるのかってことだよ」
「僕は多分まだまだ先だと思う。痛くて気絶するなんて、そんなのじゃ客前に出せないって」
「……そ、そーか」
僕は商品なんだから、売り物にならなきゃ意味がない。
だけど、染岡くんは僕の言葉に、すこし安心したみたいな顔。
「早く佐久間くんや風丸くんみたいになりたいよ」
「……」
「旦那様が僕をここに置いてくれるんだから、僕もちゃんと恩返ししなくちゃ」

染岡くんの返事がないのが気になって顔を上げると、複雑そうな顔をしていた。
どうしたの、染岡くん。
「……大丈夫だよ。焦らなくてもいいじゃねえか……お前、顔もいいし性格もいいし、贔屓にしてくれる客なんかいくらでも付くって」
くしゃくしゃと頭を撫でられて、くすぐったい気持ちになった。
そして、染岡くんは僕の手を握る。
「……お前にはこんなところ、来て欲しくなかったな」
「え?」
「別な形で会いたかった」
「ふふっ、こうじゃなきゃきっと出会えなかったよ」
「そうだけどよ」

染岡くんは何か言おうとしたみたいだったけれど、そのあとは口を噤んでしまった。

「僕は君に出会えてよかった。染岡くんはそう思ってくれないの?」
「……お前が、男の相手すんの、見たくねえんだよ」

染岡くんは小さく呟いて、僕は彼のその言葉に首を傾げた。
どうしてだろう。ここはそういうお店でしょ?
「悪い、余計だったな。忘れてくれ」
また頭をくしゃくしゃとして、そのあと、染岡くんは仕事に戻ってしまった。
「吹雪」
「あ、佐久間くん」
「読み書きの稽古をしたいって言ったのは誰だった?」
「あ!ごめんなさい、今行くね」
僕は慌てて佐久間くんの後に続いた。

「ふ、ぶ、き」
「そうだ。やればできるじゃないか」
「あは、ありがとう。佐久間くんの教え方が上手いからだよ」
「吹雪はこっちの飲み込みはいいのに、体の方は全然らしいな」
「……うん」
「誰か、心に決めた相手でもいたのか?」
「そんな人、僕にはいない」
僕が首を横に振ると、佐久間くんは心配そうな顔をした。
「じゃあ早く慣れないと、ここを追い出されたらどうするんだ」
「追い、出されたら……」
「ないとは限らないだろう?」
「頑張らなきゃなあ」
早く慣れるように、早く僕もお客さんの相手ができるように。
「その意気だ。じゃあ今度は俺の名前を書いてごらん」
「うん!えっと…さ、く、ま」
「好きな言葉でもいいんだぜ」
「好きな言葉……うん」

ふっと頭に浮かんだのは、四文字。

「……染岡?」
「あ、あれ」
「ふーん。へえー……吹雪は染岡が好きなのか」
「好き……?」

僕は、もう大切な人は作らないって決めた。
だって、大切な人はみんな、僕の前からいなくなっちゃう。
だったら大切な人なんていなくていい。
「違うよ」
「そうなのか?まあ……それならいいんだけど」
佐久間くんは頷いて、僕の書いた文字を見た。
「吹雪、俺たちは籠の鳥だけどさ……心は自由なんだぜ」
「え?」
「誰を想ってもいいんだ。体を売る役目を果たせれば」
「佐久間くんは……」
「いるよ。俺は心をやった相手が」
「そうなの?寂しくないの?」
「だから来るのが待ち遠しいんじゃないか。俺はここであいつを待つんだ」
あ、風丸くんと同じ顔だ。

優しい、大事な人に向ける顔。
とても綺麗で寂しい顔。
僕もこんな顔をする相手ができるのかな、と思ったけど、あんまり期待できそうにない気がする。
だけどお客さんとれるようにならないといけないんだから、頑張らなくちゃ。
佐久間くんや風丸くんぐらいとはいかないけど、それでもね。

「また来てくれるって保証はあるの?」
「そんなものないさ。あいつは軍人だから、いつ死んでもおかしくないんだ」
「それなのに、待つの」
「ああ。俺はあいつを想ってるし、あいつは俺を愛してる。たとえどちらかが死んでも、それは変わらない事実なんだ」
佐久間くんは笑った。ああ、切なそう。
きっとほんとは、愛してほしいんだ。傍にいてほしいんだね。
佐久間くんも風丸くんも、そして僕も、家族なんていない。
だから憧れちゃうのかもね、所謂家族っていうものに。

「体を売ってる身でも好きだっていう物好きだったからな。心をやる理由なんてそれだけで十分だよ」
「佐久間くんは強いんだね」
「強い?変な事を言うな、吹雪は」
「僕は弱いから、大事な人なんて作れないよ」
失うのが怖いから、大事な人は作れない。
さっき佐久間くんが言ったように、もし僕が染岡くんのことを好きだったとしても、それはいけないことなんだ。
僕が好きな人、大事な人はみんな僕の前からいなくなっちゃう。
だったら好きになんてならない方がましだ。
「吹雪」
「なに?」
「お前が言うように俺は強くなんてないんだぜ。弱いから、うじうじこんなところで男を待ってるんだ」
「え……」
「俺が本当に強かったら、こんなところ飛び出して、あいつの隣にいるよ。あいつが俺のいないところで死ぬなんて許さない」
佐久間くんはそう言って、片目を細めた。彼を見てるんだ。佐久間くんが心をあげた相手を。
「吹雪、最初は怖いだろうと思う……けど、俺たちにはそれしかないんだ」
「うん、そうだね」
「……いい人にあたるといいな。お前が傷つくのは見たくない」
佐久間くんの細い指が、僕の髪をなでた。優しく撫でられて、なんだか懐かしい感じがした。
こんな風に撫でてもらうことなんて、なかったもんなあ。
僕はここに来てから、とても幸せな日々を送っている。
だから、ここに置いてくれた久遠さまにちゃんと恩返しできるように頑張らなきゃ。
「なあ、吹雪」
「ん?」
「頑張りすぎるなよ?」
「あはは、うん!大丈夫だよ、ありがとう」
佐久間くんはまた僕の頭を撫でて、そして笑った。
「何かあったら相談くらいなら聞いてやるよ」
「本当にありがとう、佐久間くん」
「俺にはこれくらいしかできないから」
なんだか苦しそうに笑った佐久間くん。
少し気になったけれど、すぐに再開された読み書きの稽古に僕は熱中してしまって。
結局佐久間くんのした表情のその意味は、わからなかった。

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