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エンドレスゲーム
「口止め料を要求する」
「……お前なあ」
「キスじゃほだされてあげないからね!」
いつもは染岡くんがキスでごまかしちゃってうやむやになるけど、今日は許してあげない。
これで何回目だと思ってるんだ、何回目だと!
口止め料くらい貰っておかないと、僕ばっかりが損してる気分になる。
「じゃあ、何なら許してくれんだよ」
「エッチ一回」
「一回でいいのか」
「できればもっと」
太腿に触れた染岡くんの手をぱしんとはたいて、そしてじっと彼を見つめる。
困ったような表情。でも耳が赤い。
「いっつも俺のせいにして……お前にも原因アリだろ」
「染岡くんが一方的に悪いじゃないか」
「ああ、そーかよ」
染岡くんはため息をついて、そして僕を押し倒した。
僕は押し倒されながら、期待に胸を膨らませる。実際は膨らんだ胸なんてないんだけどね。
見上げる染岡くんの目は獰猛な獣のそれ。
……その目を見せてくれるたびに、僕は染岡くんと出会えてよかったと思う。
獣みたいに僕を欲しがってくれる染岡くんが大好き。
ううん、彼は獣じゃないなあ。竜吾、だからドラゴンかな。
じゃあ僕はさしずめ、ドラゴンが恋をするお姫様だね。
いばらに囲まれた城の奥で眠る僕を、染岡くんドラゴンが守ってくれるんだ。
僕を取られたくなくて王子様っていう名の侵入者をずっと殺して、殺していきてく。
僕は安心して眠っていられる……でも僕だったら眠らないよ。
起きてずっと染岡くんのそばにいてあげる。
「また意識どっか飛んでるだろ」
「……ん?」
「お前、俺とする時くらい集中しろよ」
「染岡くんのこと考えてたんだもん、許してよ」
「口止め料とやらを要求してきたのはお前だろ」
染岡くんの手の動きに、あ、とかう、とか声が漏れる。
いやらしいんだもん。もう!
まあ、染岡くんをそういう風にしたのは僕なんだけどね。そう考えると自業自得っていうか。
「……ッ、もう……胸ばっかりしないで」
「素直に触ってほしいならそう言えって」
「やだ意地悪」
「お前、イジワルされんの好きじゃん」
「あ、もう!」
きゅっと抓まれて腰がじんじん疼いてくる。
僕だってエッチはそんなに好きじゃなかったのに、染岡くんとするようになってからはエッチするの楽しみだなって思うようになってしまってた。
童貞だったくせに僕をこんな風に仕込んだ染岡くんはずるい。
けど、責任とってよって甘えたらオウって返事してくれて、それからずっと染岡くんとのお付き合いは続いている。出逢ってから10年たった今でもね。
そういう、義理がたいとこも好きだし、好きでいてくれることに感謝もしてる。
……僕も染岡くんにべた惚れだから、離れるなんてこと出来ないんだけどね。
気持ちも好きだし、体も好きだし、染岡くんしかもう見えてない。
10年間ずっと好きでい続けるなんて、好きになった当時はそんなこと無理だって心のどこかで思ってたんだ……だけど、そんな気持ちはいつの間にか消えてた。
今はもう、何十年先だって染岡くんといる未来を信じられる。
「あん、ん」
「濡れすぎ」
「ばか、染岡くんだってすっごい固いんですけどー!」
「当たり前だろ。お前のこと欲しいと思ってんだから」
「え……あ、はい……」
「なんだそれ」
ほっぺにキスされて、首筋を舐められて力がどんどん抜けてく。
染岡くんのずるいところ、その二。
僕を喜ばせる言葉を意識しないで言っちゃうところ。どんどん染岡くんを好きになっちゃう。
「……僕も、染岡くんに触ってほしくて、……ふぁっ」
「ちゃんと言えるじゃねーか」
ご褒美みたいに唇にキスをくれた染岡くんは、僕のそれにパンツ越しに触れた。
そのまま扱かれて腰が震える。もっと欲しいけど、布越しの刺激じゃ物足りないよ。
「直接触ってよ……もっと欲しいんだ」
「おねだりする士郎、かわいいと思うぜ」
「……~~反則、染岡くんのばか!」
「馬鹿はお前もだろ。さっきから腰揺らしすぎだ」
染岡くんの表情には余裕なんてなくて、そんな風に口では言いつつも早く僕に入れたくてしょうがないんだろうな、なんて思って。
そしたらもう胸が熱くて、僕も早く染岡くんが欲しくてしょうがなくなる。
染岡くんのは太くて長くて、それから大きくて……とにかく魅力的なんだ。絶対染岡くん以外の人じゃ、僕を満足させることはできないだろうな。
それを早く僕の中に入れて、それで掻き回して欲しい。めちゃくちゃになるまで擦ってほしいし、溶けるまで犯しつくして欲しい。
僕はそんな自分をヘンタイと形容するけど、染岡くんもやっぱり同じようにヘンタイって思うのかな。
指じゃ我慢できなくて、僕はさっきから中を擦って犯す、悪戯な染岡くんの指をきゅっと締めつけた。
そしたら、染岡くんの大きな手が僕の亀頭を包んで擦る。剥けたそこはその刺激に弱くて、僕は腰を染岡くんに押し付けて欲しがってしまう。
浅ましいなあ。恥ずかしいなあ。
いやらしくて粘着質な水音が漏れて、染岡くんの手がぬるぬるに光るのが見えて。
僕が感じてるのが目に見えてわかっちゃって、染岡くんの息が荒いのをうなじに感じて。
「ね、僕もうだいじょぶだから……頂戴」
「……おう。俺も我慢できね」
お尻の間に染岡くんのそれを感じて、ぞくぞく感じてしまう。
欲しい。早く挿れて欲しい。どんなにひどく犯されても構わないから。
「ッア、……ン、ふぅっ……!」
「相変わらず、気持ちーな……!」
「あんっ、や、あぁっ」
「慣らさなくてもいいくらいじゃねーか」
「っ、あつ、あついよ、」
「俺もあちーよ」
「固いし、おっきいし、……ッうう~」
「うん、お前ここ好きだよな」
染岡くんが長いストロークで腰を使って、僕の奥をがんがん突き上げてくる。
いっつも壊れそうって思うくらいに力強いその動きに、僕も応えて腰を振る。
振ってるつもりはないんだけど、どうしても染岡くんのを感じてしまうと勝手に動くんだもの。僕の体、染岡くん用に慣らされてるんだ。
「はんっ、んっ、んあぁっ」
硬く猛ったそれの張り出した部分で擦られると、もう意識が飛んでしまいそうなほど気持ちいい。しかも僕がそこをいじめられるの好きなの知ってて染岡くんは意地悪するんだ。
ベッドの上での染岡くんは、どっちかっていうといじめっ子タイプで、僕は小さな頃からそういういじめっ子タイプに弱かったから……つい従ってしまう。
「好き、染岡くん、好きだよぅ」
「……俺も、好きだっ」
「あっ、も、やぁあ!」
「出してっ、うっ……いいか」
「いっぱい頂戴ッ」
いつもみたいにぎゅって、体の全てで染岡くんを抱き締める。
大好き。愛してる。だから僕の中に、君の子種をたくさんちょうだい。
僕は妊娠できないけど、それでも染岡くんを体の奥に感じると幸せなんだ。
「……っあ、あつ……」
「……やっべーわ、きもちい」
「ぼくも」
いっぱい感じて、僕の体の中が染岡くんで満たされて。
僕の上に圧し掛かってる人にキスを贈ると、そのままの体勢でキスを返された。
「なあ、吹雪」
「ん……?」
「これからは俺の分もな」
「染岡くんが買ってきてくれればいいじゃないか」
「まあ、そうだな。……見つけたらちゃんと買ってきてやるからよ」
「二人でだからね。君、いっつも僕の分までとっちゃうから怒ったんだよ僕」
「分かった分かった」
染岡くんが体を起こして、僕の中からいなくなる。
ずる、と引き抜かれる感覚にまたぞくぞくした。染岡くんに広げられた部分がさみしくなる。
「……やっぱりもっかいしたいなあ」
「何回すりゃ気が済むんだよ。つーか腰痛くねえのか?」
「痛くないよ。染岡くんは足りなくないの?」
「……やっちまったら、お前に嫌われちまいそうだからしねーよ」
「なにそれ!どんだけするつもり?」
「たぶん離せねえもん」
「……染岡くん!」
隣に寝転がった染岡くんにぎゅっと抱きつくと、ハイハイと頭をなでられた。
僕のことを気遣ってくれてるのもわかるから、我儘は言わないけど。
でも、僕だってホントはずっと染岡くんを離したくないんだよ。ずっと繋がっていたい。
「……っし、じゃあ、デパ地下行くぞ」
「どこの?」
「どこでもいいよ。とりあえず、お前が好きなあれがあるとこ」
「……うん!でも、もうちょっと染岡くんとイチャイチャしたいな」
「なんだよそれ」
そうは言いつつも、染岡くんは嬉しそうに、照れくさそうに笑ってくれた。
僕はそんな染岡くんが大好きで、もうたまらない。こんなにカッコイイ人、他にいないもん。僕の王子様だもん。
「高いやつ買っちゃおうかな」
「……悪かったよ。今日は俺がおごってやるから、なんでも好きなヤツ選べ」
「いいの?……じゃあ、ふんわり卵のプリンがいいな」
「おう」
今日の揉め事の発端は、染岡くんが僕のプリンを勝手に食べちゃったこと。
……そんな簡単なことで怒る僕も僕って言われるかもしれないけど、ね。
……でも、こうすれば毎回毎回染岡くんと溶けるくらい気持ちいいことができるんだよ。
一回味を占めちゃったら、そう簡単にはやめられないよ。
「行く前にもっかいエッチしてから行こうよ」
「だからな、士郎おまえ」
「あは、もっかい名前呼んで、竜吾くん」
「……」
染岡くんも染岡くんで、何回も同じことするし……頭のいい彼が、同じ過ちを繰り返すわけがない。
多分染岡くんも分かってて、これに付き合ってくれてるんだ。
だとしたら、なんて優しくて素敵な彼氏に恵まれたんだろうな、僕。
「……あいしてる、士郎」
「僕もだよ、竜吾くん」
「……なんか恥ずかしいな、これ」
「うん。だけど、しあわせ」
「おう。俺も」

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