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SYN ★~sinと愉快な仲間たち~★
腐女子・BLという単語が判らない・嫌いな方は逃げて!妄想過多により健康を害する恐れがあります。
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久しぶりに年越しSSなど書いてみようかと思い立ちまして。
やっぱり文章書くの楽しいから、オンラインでは変わらず小説中心でいきたいなと思います。
今年一年ありがとうございました。
来年もまた、よろしくお願いいたします。


はやま








 新年を迎えるということは、またひとつ年をとることだ。
 あまり意識したことはなかった。
 新しい年がこようが、オレの置かれた状況が変わるわけではなかったからだ。

「ラセツ。あんた、ちょっとくらい手伝いなさいよ」
「ヤダ」
「じゃああんたの分のそばはオーグにやるからね」
「やめろ。おいやめろ」

 シンジャミにおどされて、しょうがないから手伝ってやることにした。
 炬燵から出てキッチンへ行くと、割烹着に三角巾といういでたちでシュテンが料理をしている。
 格好はともかく、鍋からはうまそうな匂いがしていた。

「シンジャミに手伝えって言われてきた」
「そうか、すまないな。じゃあ、戸棚から椀を出してくれ」
「おー」

 椀という大きさじゃない、むしろ丼に似た器を16個用意する。
 こんな風に年の瀬を迎えるのが普通なのだと、共同生活をするようになってからはじめて知った。
 言いだしっぺはザナークらしい。オレは途中で拾われたからよく知らないが。
 シュテンがそう言っていたからたぶんそうなんだと思う。

「なーシュテン」
「どうした?」
「お前さ、何で好き好んでこういうことしてんの?」

 人数分の料理を用意するのも大変だろうに、なぜシュテンがこんなことをしているのか。
 いつも気になっていた。
 シンジャミがやるならわかる。女だし、器用だし。
 オレよりもごつい手で、太い指で、どうして料理をしようなんていう気になったのか。

「そうだな……好きだからだな。こういう作業が」
「は?」
「料理を作ったり、壊れたものを直したり」
「料理を作るのは分かるけど、なんで壊れたものを直すのが好きなんだよ?お前、力強いんだから、壊すののが得意そうなんだけど」
「……私は壊しすぎたからな」

 小さく呟かれた言葉は、シュテンがそれを悔いていることを如実に表していた。

「なあ、シュテン」
「……」
「……もう聞かねえから」

 ごめん、の気持ちをこめて、そう言った。
 シュテンには伝わったのだろうか。分からないけれど、麺がゆで上がったことを伝えるタイマーが鳴って、その話はうやむやになった。



「ごちそうさまー」
「まあまあだな。明日は餅用意しとけよシュテン」
「ああ。もうできている」
「クッ、そう言うと思ったぜ」

 年越しそばを食べ終わったドメインメンバーたちがそれぞれの部屋に戻り、最後に残ったのはオレとシュテンだけになった。
 シュテンとオレは一緒の部屋で暮らしている。
 だから、先に帰って待っていてもいいけれど、なぜか今日はそうしたくない気分だった。

「先に戻っていてもいいぞ」
「ん」

 そう言われても何もすることがないから、キッチンをウロウロしながらシュテンが後片付けしているのをただ眺める。
 シュテンも邪魔にするでもなく淡々と作業をしていた。
 片づけを終えて、一緒に部屋に戻って、とりあえずソファに寝転んでいると、部屋の簡易キッチンからシュテンがマグカップを持って出てきた。

「ラセツ」
「ん?」
「甘酒だ。飲むか?」
「子供扱いすんなよ」
「酒は毒にもなる。体ができるまでは毒を積極的に摂取するのは勧められないからな」

 ほら、と手渡された甘酒は、丁度人肌くらいに温まっていて美味そうなにおいがした。
 口をつけてすすると甘味が口いっぱいに広がる。

「美味いか?」
 ひとつ頷く。シュテンの顔がほころぶ。
「もうすぐ年が明けるな」
 もうひとつ頷いた。
「お前と年明けを迎えることができてよかった」
 ……すこし間をおいて、ひとつ、頷いた。

「来年もきっといい年になる。お前がいれば」
「……恥ずかしいやつ」
「そうは思わないか?」
「……思うなら離すな」
 隣に座ったシュテンにほんの少し体重を預けたら、でかい手が伸びてきて頭をくしゃくしゃした。子供扱いされてるみたいでちょっと腹立つ。
 ぐ、と抱き寄せられて距離が近づく。
 こいつ、あったけえな。

「……離さないぞ」
「ん」
「これから先も何度でもこうして、古き年を送って新しい年を迎えよう」
「……うん」


 年の暮れも年の始めも、この男と一緒にいられるのはきっと幸せなことなんだろう。
 まだまだ知らないことは多いけれど、いつかそれをオレに教えてくれるんだろうか。

 しばらく見つめて、目を閉じた。
 期待通りに重ねられる唇。
 離される前に軽く噛みついて目をあけると、そのままぐっと押し倒される。

「……誘っているのか?」
 腰に来る低音にぞくぞくしながら、太い首に腕をまわした。
 当たり前だ。お前がキスなんてするからいけないんだぞ。

「やりてえんだろ。さっさとやろうぜ」
「……お望みとあらば」


 まあ、こういうのも嫌いじゃねえし、むしろこれを毎年繰り返せるんなら。
 望むところだ。



くれとはじめの境の日   シュテラセ

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