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久々のそめふぶ!
「染岡くんと一緒ならなんでもいいや」 吹雪は口癖のように言う。君と一緒ならなんでもうれしい。 俺も同じ気持ちでいるわけだが、一緒にメシ食いに出てきてるときにまでそれを言わなくてもいいんじゃないかと思う時もそりゃないわけじゃねえ。 ファミレスのメニュー表を前にしながら吹雪のその一言を聞いて、俺は吹雪の視線をたどった。 ドリアとパスタのページを行ったり来たりしている。 きっとこの中のどれかで迷っているんだろうから、その中から吹雪のお気に召しそうなものを探す。幸いなことに俺は口数が多いほうじゃねえから、黙っていても吹雪は急かすことをしねえ。 俺はからあげ定食が食いてえんだが、こいつに合わせてやるのもまあ悪くねえかな。普段食わねえようなものを食うのも新鮮だしな。 「うーん。君は何を食べるの?」 「迷ってんだよ」 「だよねぇ」 ファミレスって手軽だけど、メニュー数が多いのも考え物だよね。 眉根を寄せて困り顔をする。こいつみたいに顔が整っていれば、どんな顔をしても様になる。 ずりいよな。すげえモテるんだぜ。 「じゃあこれにすっかな」 吹雪の好きそうなドリアを指さすと、吹雪は驚いたように目を見開いた。 「僕それにしようかと思ってたんだ」 「本当か?」 「うん。えっ僕なにか言ってた?」 「言ってねえよ」 その表情がかわいくて、思わず頬が緩んでしまう。 染岡くんは魔法使いみたいだよね、たまに。なんてはにかんだように笑われたら、かわいい以外の言葉が思いつかねえ。 「でもちょっと意外だったかな」 「何がだよ?」 「僕は、今日きみはからあげ定食の気分だと思ってた」 「!」 「図星でしょ。ずっとそのページ見てるんだもん、わかるよ」 「お、おう……」 「ふふ。からあげ定食にしなよ。僕は君が選んだドリアにするから」 魔法使いだなんだって、吹雪のほうがよっぽど似合うじゃねえか。 ほんとよく見てやがるよ。ディフェンダーとしても活躍できる吹雪らしいぜ。 「ね、染岡くん」 「ん?」 「あのね」 もじもじしながら吹雪ははにかむ。何を言いたいのかはわからないが、たぶん俺がうれしくなるような一言を言ってくれるんだろう。 俺は吹雪のことしかわからねえが、こんな顔をするときはどうなるか、予想できないわけがねえ。 「まるでその……夫婦みたいじゃない?お互いの好きなもの、食べたいもの、わかっちゃうのって」 「なっ」 「ごっごめんね変なこと言って」 「……お前な~……」 吹雪と出会って10年。一緒に暮らし始めてからは少し。 確かに人生の半分近くを吹雪と過ごしてきたし、これからは半分以上を吹雪と過ごす。 「こういうとこで言うんじゃねえよ」 「ごめんね」 「……かわいすぎんだよ」 照れくさくて顔が熱くて、思わず漏らしちまった本音。 吹雪は耳ざとくそれを拾って顔を真っ赤にした。 遠距離はあったが付き合って10年だ。 いつまでも初々しい吹雪が、その、好きだ。 「……えへへ。染岡くん、パンケーキも頼もうよ」 「好きなもん頼めよ」 「僕がおごってあげる!だから選んでよ!」 「……おう。それじゃ、お前が好きなやつな」 吹雪と一緒にいられんなら、何でも構わねえ。 いまこうして一緒にいられる幸せが、俺にとっては一番大事なことなんだ。 稲妻/そめふぶ PR この記事にコメントする
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