× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
仕事を休む気満々の今日この頃だけど、どうせ休めないんだよそんなこと知ってるよ~!
「お疲れさま、兄さん」 「セシル」 「コーヒー淹れたよ。飲むよね?」 「ああ、すまない」 僕の兄さんは会社勤めをしている。 なんの仕事をしているのかは、実は知らない。 でも、時々すごく忙しくて、家に帰るのが午前さまってこともある。 だから、きっととても大変な仕事をしているんだろうと幼いころから思って暮らしてきた。 今日も持ち帰りの仕事があるみたいで、帰ってきてからずっと部屋にこもりっぱなしだった。 そんな兄さんに僕がしてあげられること、それはコーヒーを淹れるくらい。 おいしいコーヒーの淹れ方が知りたくて、近くの喫茶店のマスターに習ったんだ。 特別な器具がなくても、愛情をこめて淹れるやり方をマスターは教えてくれた。 マスターの娘さんがこっそり、「一番大切なのは心をこめることよ」って教えてくれたり。 学校が早く終わった日にはそのお店に寄って、マスターに太鼓判をもらえるまで通い詰めて。 ついに太鼓判をもらったから、今日のコーヒーはきっと今までで一番おいしく淹れられてるはず。 兄さん喜んでくれるかな。 兄さんが黒いマグカップを手にする。どきどきしながらそれを見てたら、兄さんは手を止めてしまった。 「……」 ごくりと生唾を飲み込んで、兄さんのその先をうかがう。 僕のほうを向いて、兄さんは驚いたような顔。 「これはセシルが淹れてくれたのか?」 「うん」 「すごく香りがいいな。新しいものかな」 「ううん。前から家にあったやつだよ」 「驚いた。全く違うもののようだ」 兄さんの反応がうれしくて、僕は先を促した。 「ね、飲んでみて」 促されるまま兄さんはマグを口に運んでくれる。 兄さんののどが上下するのを見て、我慢できなくて急かすように聞いてしまった。 「どう?おいしい?」 兄さんはしばらく無言でいたけれど、僕の顔を見てふっと瞳を緩めた。 どきっとするくらいかっこいい顔で微笑む。 「今まで飲んだコーヒーの中で一番美味い」 「ほんと?」 「ああ。セシル、こんなに美味いコーヒーをありがとう」 「う、うん!兄さんの役に立てて嬉しいよ!」 あまりにうれしくて兄さんに飛びつくと、兄さんは僕を受け止めてぎゅっと抱きしめてくれた。兄さんからはコーヒーの香りがした。 「お仕事頑張ってね」 「ありがとう、セシル」 「また欲しくなったらいってね。いつだって僕が淹れてあげる」 「ああ。私は幸せ者だな」 「ふふ。兄さんが幸せだと僕も幸せ」 兄さんに手を振って部屋の戸を閉めた。兄さんはマグカップを挙げて、ありがとうな、ともう一度言ってくれた。 それがまたうれしくて、兄さんの部屋の戸をしめたあと、僕は一人で思い切りガッツポーズを決めたのだった。 終 最終幻想4/ゴルセシ PR この記事にコメントする
|