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SYN ★~sinと愉快な仲間たち~★
腐女子・BLという単語が判らない・嫌いな方は逃げて!妄想過多により健康を害する恐れがあります。
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剣士とランサーの話。
マーシャはちょっとだけユートにときめいていたときがあるんだよ。







「ユート。いる?」
「ああ。どうぞ」
「お邪魔するわね」

 ユートが泊まっている部屋のドアをノックすると、予想外に一人分の声が返ってきた。
 同室のカナタはあまり外に出たがらないから、てっきり一緒にいると思っていたのに。

「……カナタは古書堂に行ったよ。なんでもほしい本があるとかで」
 私の視線を察したのか、聞く前に答えが返ってくる。
「騎士さんが一緒に行ってあげたほうがよかったんじゃない?」
「申し出たんだが断られた」
「あら。かわいそうに」
「何か飲むか?ハーブティーなら冷えてるのがある」
「じゃあいただこうかしら」

 テーブルのイスを引いて座ってくれと促すしぐさも、紳士的で素敵なのよね。
 ありがたくその申し出を受けて、私は引かれたイスに座った。

 私が以前雇われていたギルドでの攻城戦で、ユートは最前線で勇猛果敢に斬りこんできた。
 踊るような剣さばき。重たい鎧を纏っているのに軽やかなステップ。
 一目で修練を積んだ戦士だということが分かったけれど、ユートの腕には盾。
 剣士はあまりギルドバトルを好まないという先入観があったから驚いたけれど、実際に刃を交えてその強さを悟った。

 攻城戦に負け、役目を終えた私が流れ着いたのはこのギルド。今は傭兵ではなく正式なメンバーとしてここにいる。皆を支え、支えられ、守り、守られ。
 傭兵稼業では味わえなかった感覚をたくさん味わいながら、私はここにいる。

「お待たせ。さあ、どうぞ」
「ありがとう」
 コップを受け取って一口飲むと、さわやかな酸味が鼻を抜けた。

「今日はどうしたんだ?」
「どうしてるかな、と思って」
「いつも通りさ。剣と盾の手入れが終わって手持無沙汰になっていたところだ」
 いつもならカナタが話し相手になってくれるんだけどな。
 あ、照れくさそうな顔。あまりその顔、人の前ではしないわね。
「ユート。私はあまり言葉がうまくないから、単刀直入に聞くわね」
「俺にこたえられることだといいんだが」
「カナタのこと、好きで抱いているの?」
「だっ」
 勢いあまって立ち上がったのはいいけれど、二の句が継げなかったらしくそのままゆっくりとユートは腰を下ろした。
 そして顔を覆って、絞り出すように一言。
「……好きじゃなきゃ抱こうと思わないだろ……」
「そりゃそうよね」
 ハーブティーをもう一口飲んでのどを潤した。戦闘のときのぎらぎらしたユートにときめいた記憶はまだ新しくて、そんな男の恋話を、しかも生々しいものを聞いてしまった動揺からか口が渇く。
「トトリが心配していたの。ユートがへたれなのかって」
「そんなことはない、と思いたい」
「でも実際のところどうなの?私、ユートはストレートだと思っていたわよ」
「俺もそう思ってた。でも、カナタは特別なんだ」
「特別?」
「ああ。だがその、いろいろ複雑で」
「要するにへたれてるんじゃない」

 やっぱり本人の口から聞くと、あきらめざるを得ないわよね。
 カナタが特別。わかってはいたんだけど。

「マーシャ、教えてほしいことがある」
「何かしら」
「腕っぷしの強い男に組み敷かれたら、女性はやはり恐ろしく思うものだろうか」
「好意を持っている相手でなければ怖いでしょうね。好意を持っていても、突然のことで怖くなってしまう子もいるかもしれないし」
「……やっぱりそうだよな……カナタはトトリよりも小柄だし、もしかしたら俺のことまで怖くなることもあるかもしれないだろうし……」

 あきれた。まさかそんなことに怖気づいてカナタに気を遣っていたのかしら。
 対峙したときは思わなかったけれど、実は繊細なところもあるのよね。
 鋼鉄の胃袋を持っている男とは思えない。

「だからカナタから誘われるまで手を出さないでいるの?」
「……面目ない……」
「カナタだって男の子よ。同じ男を誘うってどんな気持ちなのかしらね」
「……」
「私が同じ女性を誘うなら、なんだか自分だけが盛っているようで恥ずかしくて、後ろめたいわ。相手にも同じくらい求めてほしいし、この人は同情で私と関係をもっているのかと思ってしまうわ」
「……そういうものだろうか」
「そういうものよ。犯すことばかりを考えている男は野蛮で下賤だと思うけれど、恋人を不安にさせる男も大概だと思うわ」

 ハーブティーの水面に映る私はなんだか複雑そうな顔をしている。
 カナタの気持ち、勝手に代弁したみたいな形になっちゃった。カナタ、思ってなかったらごめんね。でも、やっぱり私よりもユートに近い場所にいるんだもん。幸せになってほしいわよ。

「もう一つ聞いてもいいだろうか」
「いいわよ」
「何もない時でも、その……誘ってもいいんだろうか?」
「ちゃんと確認をとればいいんじゃない?嫌がったらやめないと、強姦になっちゃうけど」
「うっ」
「ユートはそんなことしないってカナタは分かってるわよ。あんたたち、お互い言葉が足りないのね、きっと」
「……カナタは何でもわかっているような気がしてしまって」
「そんなわけないじゃない。ユートよりもトトリよりも、あの子はずっと子どもよ。もっと自分を知ってもらうように頑張りなさいよ」
「ど、努力する……マーシャ、怒らないでくれ」
「怒ってないわよ」

 ユートが鈍感なのがいけないんだわ。シンがいつだったかそんな話をしていたけれど。
 本当にその通りよ。

「とにかく。相手が好きなら自分から仕掛ける時があってもいいんじゃないの?」
「あ、ああ」
「カナタはちゃんとあんたを受け入れてくれるわよ」
「……ありがとう」
「同じギルドメンバーとして、仲のいいメンバーを見ているほうがいいわ」
「そうだな」
「ハーブティーおいしかったわ。ありがとう」
「どういたしまして」


「ただいま帰りました……あれ、マーシャさん」
「マーシャ!ただいま!」
「あら。トトリ、カナタと一緒だったの?」
「うん。一緒にポーションの買い出しいってきたんだ。マーシャの分も買ってきたから分けよ」

 トトリが軽く私にウインクを送ってくる。
 カナタに話したのね。私もそれを見てうなづく。

「ありがとう。じゃ私も部屋に戻るわね。お邪魔しました」
「お邪魔しましたー」

 トトリと一緒に部屋を出て、顔を見合わせて頷いて、私たちは部屋を後にした。

「うまくいくといいわね」
「うん。うまくいくよ。大丈夫」










女の子たち世話焼きだとほんとかわいいよね。

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