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メティとトトリの話。
孤独な男とほんとうは孤独な女の子。 「めーちゃん、だめだよ。外に出たら」 「……」 「満月の夜は外に出ないって決めたでしょ」 大きな木の根元にうずくまるもふもふの塊に話しかけた。 めーちゃんは満月の夜になるといつもこう。それが嫌で外には出ないっていうくせに、気が付くと外に抜け出してしまっている。 魔法使いが集まる、スマグっていう町。 そこで生まれ育った魔法使いだけが、満月の夜になるとウルフマンに変わる。 どうしてかはわからないってめーちゃんも言っていたし、ブルンネンシュティグに行って初めてウルフマンを見たうちには全然わかるはずもない。 だけど、めーちゃんはそれをずっと気にしてた。 古都の宮廷付きウィザードはウルフマンにならないからかもって、ゆーちゃんが言ってた。 もふもふした塊に手を伸ばすと、触るなっていうみたいに唸り声。 でもうちは気にしないで触れる。めーちゃんがうちを傷つけることなんてないもの。 なんにもこわくない。 「めーちゃん。帰ろう、おうちへ」 ギルドのみんなが待ってる。ゆーちゃんやマーシャが。 「仲間なんて欲しくなかったのに……」 唸るようにめーちゃんは言う。本心じゃないなんてこと、わかってる。 めーちゃんは一人でいる時間が長すぎたから、どうやって人とかかわればいいかわからないだけ。 みんなが作ってくれた、うちたちが帰る家。 一人ぼっちのウルフマンと、一人ぼっちのビーストテイマーを迎えてくれる家。 ギルドのみんながうちたちの家族。 大好きな、たったひとつの家族。 「うちはね、めーちゃんと一緒のギルドになれてよかったよ。帰ろう、おうちへ」 「……帰る家などもうない」 「ギルドがうちらのおうちだよ。ゆーちゃんたちが待ってる」 早く帰ろう、ここはさむいよ。 ぎゅっとめーちゃんを抱きしめると、獣のにおいに混ざってめーちゃんのコロンの香り。 めーちゃんはひとりでいることをあきらめたのか、うちをくっつけたまま立ち上がって見慣れた道を歩き始めた。 「……めーちゃん」 「……帰りましょう、トトリ」 「……うん」 いつものめーちゃんの話し方。よかった。うちの大好きなめーちゃんだ。 めーちゃんがうちを抱っこしてくれてるのがうれしくて、もふもふに顔をうずめたまま、ぎゅっと抱きしめた。 --------------- 偏屈なお兄さんと天真爛漫な少女っていう組み合わせ本当に好きだ… そしてお兄さんが大きな狼男になってしまうとか本当に好きだ… PR この記事にコメントする
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