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久々に赤石。ほんとなんともない日の話を書くのがとても好きです。
「あっくそ、また外れた」 「シンはほんとにダート投げへたくそだよね」 「俺だって!俺だってちゃんと練習してるんだぞ!」 的のかかしは無傷できらめいている。その足元にはぼろぼろと無造作に落ちたダート。 俺のノーコン具合はギルドでも有名で(非常に不名誉だが)、そのおかげで武道家として戦わざるを得なくなった。 折を見て練習すれば、こうだ。 「練習してるのは知ってるよ。それにしてもシンのはすごいね」 「……おう……」 がっくりと肩を落としながら落ちたダートを拾う。やたらと重く感じる。 がんばれーとトトリがぽんぽん肩をたたいてくれたが、そのたびに手の中のダートがぼろぼろと落ちた。 「シン、トトリ」 「あ、るーちゃん!」 「お茶にしませんか?」 振り向くと、ごついビショップがにこにこしながら立っていた。 どうやら俺たちを迎えに来てくれたらしい。 「お茶にする!みんなは?」 「ユートとカナタがいますよ。マーシャにも声をかけたので来ると思います」 「めーちゃんは?」 「メティは朝から地下水路探索に出ていてまだ戻りませんねぇ」 「りょーかい。ほぼみんなだね!シン、はやくお茶にしよ」 「おう……」 とりあえず落ちたダートを拾いながらうなずくと、早く早く!と急かされる。 トトリは可愛いっちゃ可愛い妹みたいな存在だ。 村出身だからいい意味で純粋なんだ。むちゃくちゃ。 「シン、あまり気に病まないように」 「おう」 「きみの格闘センスは目を見張るものがありますし、罠解除なんかは誰よりも上手なんですからね」 「そうなんだよな。俺はそういうのはできるのに、なんでダート投げだけこんな」 「誰にも得手不得手というものはありますから」 ごつごつした手が俺の頭を帽子ごと撫でた。 こいつのこれは、どうしてか安心する。シーフギルドの親方を思い出すからかもしれない。 身寄りのない俺を引き取って育ててくれた親方。 海の男らしい節くれだった指。 こいつはビショップはビショップでも戦うビショップだから、指の感じもなんとなく似るのかもしれない。 「なあ、ルクス」 「どうしました?」 「あ」 半身だけ振り向いて背中に光を背負ったルクスの肩には光の羽。 「天界を追放された天使がビショップになった」なんて、小さなころに聞いたおとぎ話。 所詮本の中の出来事だ。 「なんでもない」 「それならいいのですが」 にこりと笑う優しい目元を見ると、やっぱり安心するんだよな。 天使といえばイメージするのは優しい女の姿だが、こんなにごつい天使もいるんだろうか。 「今日はジンジャークッキーを焼いたんですよ」 「へえ。俺ジンジャークッキー好きだ」 「前に言っていましたから、今日はきみを思い出しながら焼きました。口に合うといいんですが」 こういうことを嫌味なく言える男っていいよな。ちょっと恥ずかしいけどな。 ギルドホールへ踵を返したルクスを追いかけて、俺も家路についた。 赤石/ルクス+シン PR この記事にコメントする
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