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SYN ★~sinと愉快な仲間たち~★
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女審神者視点の三日月夢。
瞳に浮かぶ三日月っていうのがすごく神秘的だよね。







 怖い夢を見た日は、必ず縁側に出ていた。月の夜も、雨の夜も。



 そんな時必ず幼い私のそばには“誰か”がいてくれた。



 



  美しの月



 



「お姫。また泣いているのかい」



「だって、こわいゆめをみたんだもの」



「ほら、爺の膝においで。怖くなくなるまでそばにいよう」



 その“誰か”の瞳には、いつも美しい三日月が浮かんでいた。



 にこりと優しく笑う、家族ではない誰か。



 おじいちゃんの家にいる間しか見たことのない誰か。



 浮かぶ三日月。私はその人を、「三日月」と呼ぶようになった。



 



 



「お姫、近頃は泣かなくなったねえ」



「もう大きくなったもの。怖い夢もあまり見なくなったし」



「爺の膝はもう必要ないかな?」



「……寂しそうだからいってあげる」



 三日月の膝はひやりと冷たい。私の髪を撫でる手も。白い頬も。



 きっと三日月は人ではないんだ。私とおじいちゃん以外には見えていないようだもの。



 幽霊でも怖くない。三日月の手はいつも優しい。



 



 



「お姫、しばらくぶりに泣いているようだね」



「……当たり前じゃない」



「主がいなくなって、私も寂しいよ」



「三日月は泣かないのね」



「俺は泣くようにはできていないからなぁ。それに、お姫が俺の代わりに涙を流してくれているだろう」



 主はそれで満足しているだろうから、と三日月は寂しそうに笑んだ。



 おじいちゃんは鬼籍に入り、私は才能があるとかでおじいちゃんの後を継がされた。



 私の意志はそこにはなかった。でも、きっとそれでよかった。



 



 



「お姫……いや、主よ」



「どうしたの、宗近」



「主に宗近と呼ばれるとこそばゆいなぁ」



「私の近侍だもの。今まではずっとあだ名で呼んでいたから」



「三日月も俺の名の一部。主がずっと俺の名を呼んでいたことに変わりはないよ」



 桜の花が月明りに浮かぶ夜、縁側で泣く幼い私を慰めてくれた宗近。



 にこりと笑う、家族のような宗近。



 少しだけ体を近づけると、宗近は私の肩をそっと抱いてくれた。



 淡く輝く月は幼いころから変わらない。宗近もまた、変わらない。



 



 私のそばに在るこの月が、あの日のように寂しい笑みを浮かべることなど、この先ずっとありませんように。



 



 


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